『左舷 日本艦隊』見張り員が絶叫する。全員がその方向を見る。紛れもなく日本艦隊だ。全員が凍りついた瞬間だった。C.スプレーグ少将麾下の”タフィ3”は護衛空母6隻・駆逐艦3隻・護衛駆逐艦4隻の脆弱な艦隊。対して栗田艦隊は戦艦4隻・重巡洋艦6隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦11隻と強力で、最初から勝ち目のない事は百も承知でひたすら逃走を図る。だが最大速力19ノットでは日本艦隊との距離が縮まっていく。まもなくガンビアベイの周辺に栗田艦隊の戦艦が放つ大口径砲弾が落ち巨大な水柱が周囲を包む。1944年10月25日午前6時40分のサマール沖海戦の出来事である。この海戦で日本艦隊の砲戦により撃沈された唯一のアメリカ空母「ガンビアベイ」について見ていきたいと思います。
ガンビアベイはカサブランカ級護衛空母19番艦で1943年12月28日に就役している。まずはカサブランカ級とはカイザー造船所社長ヘンリー・J・カイザーが提案した30隻建造のプランでルーズベルト大統領を喜ばせ50隻の発注をもらい、1943年7月8日に一番艦のカサブランカを就役させてから、最終艦のムンダが1944年7月8日に就役するまでほぼ一週間に1隻のペースで建造され「週刊空母」の異名を持つこの空母は艦載機を運用するのに必要最小限の規模で建造され、「ベビー空母」や「ジープ空母」と言われ、護衛空母の艦種コードはCVEで空母を表すCVに護衛(Escort)の頭文字を付加したが、乗員からは燃え易い(Combustible)、壊れ易い(Vulnerable)、消耗品(Expendable)の頭文字で揶揄されていた。
サマール沖海戦で砲撃を行った戦艦長門との大きさの比較だが、ベビー空母と言われる通り飛行甲板は短く戦艦長門の2/3程度の大きさで空母と言うにはかなり小型で帝国海軍の軽巡洋艦程度の大きさしかない。
性能諸元
就役:1943年12月28日
全長:156.1m
全幅:32.9m
基準排水量:7,800トン
機関:3段膨張式蒸気機関2基2軸、9,000馬力
速力:19.2ノット
乗員:860名
兵装:
38口径5インチ砲1門
40mmボフォース連装機関砲8基
20mm単装機銃20門
艦載機:30機
FM-2 ワイルドキャット 18機
TBM-1C アベンジャー 12機
ガンビアベイはカサブランカ級19番艦で起工から完成まで171日という記録的な日数で建造され1943年に建造される予定は18隻でガンビアベイは年内建造の予定になかったが19番目に完成し戦場へのボーナスという意味でボーナスベビーとも呼ばれ1943年12月28日に就役した。最初の任務は真珠湾に向けて空母エンタープライズへの航空機輸送任務に従事した。その後サンディエゴと真珠湾で訓練を行った後5月31日、サイパン島攻略に参加するため真珠湾を出撃した。6月13日ガンビア・ベイの搭載機は駆逐艦2隻と共同で呂-36潜水艦を撃沈した。その後サイパン島に対して艦載機が攻撃を加え上陸部隊を援護する。7月23日にはテニアン島攻略作戦に従事し。8月16日にガンビア・ベイはエスピリトゥサント島に入港したが、8月24日にフィリピン攻略のため慌しく出撃し、ペリリュー島攻略に従事し、10月20日からはレイテ沖海戦に参加した。
全長 12.4m
全幅 16.5m
運用重量 7,876kg
最高速度 436km/h
航続距離 1,778km
FM-2 ワイルドキャット
全長 8.8m
全幅 11.5m
運用重量 3,371kg
最高速度 515km/h
航続距離 1,450km
TBMと同じようにFMワイルドキャットもGMが行っている。その為F4FではなくFMとなっている。F4Fの運用重量が3,612kgなので約240kgほど軽量化された。エンジンが1段2速過給器のR-1820-56を装備している。高空性能は劣るが低高度では良好。
ワイルドキャットと言うとヤラレ役というイメージだがこの時の日本搭乗員の練度は低く会敵の機会もほとんどない為、もっぱら対地支援がメインとなりこのFM-2ワイルドキャットで十分に力を発揮出来た。生産数はワイルドキャットシリーズ最多の4,777機。しかし自動車メーカがこれほどの数の飛行機を作るとはアメリカ恐るべし
初速 792.5 m/s
最大射程 16,200 m
最大射高 11,160 m
発射速度 15発/分
1934年に制式化した対水上・対空両用砲で、駆逐艦級艦艇の主砲あるいは大型艦の副砲/対空砲として広く搭載された。
発射速度:毎分120発
有効射程:4,000 m
最大射程:7,000 m
ボフォース40mm機関砲は多くの国で活躍した対空機関砲で特にアメリカ海軍の多くの艦船に搭載され空母や戦艦はもちろんの事駆逐艦や攻撃輸送艦などにの補助艦艇にも防空の要として配備された。そしてこの機関砲はアメリカ海軍の対空兵器の中で最も多くの日本軍機を撃墜したと言われている。
発射速度:毎分250から320発
有効射程:914 m
最大射程:4,389 m
海軍ではMk.IVと命名され、魚雷艇から戦艦、正規空母までのあらゆる艦艇に搭載され、大戦末期には特攻機対策として多数が増設されている。
国力の乏しい日本が消耗の激しい戦い方をするのに対してアメリカは人・物を大事に扱い大戦後半を圧倒的有利に戦った。
アメリカ軍は対日侵攻作戦を2方向から行っていた。1つはマッカーサー 陸軍大将率いる南西太平洋方面部隊はニューギニアの北岸を北西に進撃していた。これに対してニミッツ海軍大将率いる中部太平洋方面部隊はマリアナ諸島からパラオ諸島に向かって進撃し二つの部隊はミンダナオ島で一つに合流しレイテ島・ルソン島・台湾を経て日本本土に侵攻する予定だった。だが海軍のキング作戦部長から時間がかかり、被害も予想されるフィリピン奪回を後回しにして、台湾・中国沿岸を進撃するプランを主張した。だが「アイシャルリターン」の言葉を残してフィリピンから脱出したマッカーサーにはとても容認出来ない内容で7月にハワイホノルルで開かれた軍事会議の席上出席していたルーズベルト大統領にとうとうと雄弁をもってフィリピン攻略の必要性を説き9月15日ニミッツ・マッカーサー両大将に向けて10月20日レイテ島攻略が決定した。
日本海軍 |
アメリカ海軍 |
連合艦隊司令部:豊田副武大将 第1遊撃部隊(第2艦隊基幹)栗田健男中将主隊 戦艦×5 重巡×10 軽巡×2 駆逐艦×15 第3部隊 西村祥治中将 戦艦×2 重巡×1 駆逐艦×4 第2遊撃部隊 志摩清英中将 重巡×2 軽巡×1 駆逐艦×7 機動部隊本体(第3艦隊基幹)小沢冶三郎中将 空母×1 軽空母×3 航空戦艦×2 軽巡×3 駆逐艦×8 艦載機×100 |
南西太平洋地域総司令部:マッカーサー大将 連合軍南西太平洋地域海軍部隊(第77任務部隊)キンケイド中将 第78任務部隊・第79任務部隊 第77.1任務群 第77.2任務群(火力支援群)オルデンドルフ少将 戦艦×6 重巡×4 軽巡×4 駆逐艦×21 魚雷艇×39 第77.3任務群(近接援護群) 第77.4任務群(護衛空母群)スプレーグ少将護衛空母×16 駆逐艦×9 護衛駆逐艦×12 中部太平洋地域総司令部:ニミッツ大将 第3艦隊(高速空母部隊)ハルゼー大将 空母×8 軽空母×8 戦艦×6 重巡×7 軽巡×10 駆逐艦×58 艦載機×1000 |
アメリカ海軍はその他に補助艦艇を含めると戦闘艦艇157隻、輸送船420隻、特務艦船157隻 総計734隻の世界最強の大艦隊となった。特に攻撃の主力となる機動部隊は6月のマリアナ沖海戦で壊滅した日本海軍とアメリカ海軍では戦力差が10倍以上に開き、基地航空隊も当初1,000機を準備していたが、先の台湾沖航空戦においてその6割を喪失しフィリピンに作戦可能な海軍機は150機ほどで、作戦の主力となる 第1航空艦隊も当初予定していた保有機350機がその10分の1にも満たない30機ほどの実働可能機数と惨憺たる状況となる。
99棺桶と揶揄されるほどの鈍重な99式艦上爆撃機も作戦機として出撃している。写真は10月29日午前9時45分海岸通りの舗装道路を滑走する神兵・神武両隊の99艦爆でマニラ東方の機動部隊をもとめ出撃していく。
6時45分 戦艦大和の前檣最高部の防空指揮所の見張員が水平線上に平甲板の空母らしきものを発見。
9時11分 ガンビア・ベイは沈没した。
スプレーグ艦隊の必死の抵抗により日本艦隊にも損害が出始め、重巡の熊野・筑摩・鈴谷・鳥海が損傷して落伍した。
歴史群像 太平洋戦史シリーズVol.9 レイテ沖海戦 ㈱学習研究社
歴史群像 No55 レイテ沖海戦 ㈱学習研究社
丸 別冊 大いなる戦場 比島陸海決戦記 ㈱潮書房
艦船模型 MODEL Art スペシャルNo39 第2次世界大戦のアメリカ軽/護衛空母 (有)モデルアート社
世界の傑作機 No68 グラマンF4F ワイルドキャット ㈱文林堂
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- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記2 ガンビアベイの迷彩塗装
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記3 ガンビアベイの迷彩塗装・・・その後
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記4 ガンビアベイ 隙間処理中
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記5 マスキング中
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記6 プラモデル便利グッズ紹介・・・その1
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記7 船体塗装ほぼ完了
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記8 ボフォース 40mm機関砲作成記
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記9 ガンビアベイ 対空兵装
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記10 ガンビアベイを汚してます
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記11 ガンビアベイの艦橋
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記12 合体
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記13 ガンビアベイ エッチングパーツ その1
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記14 ガンビアベイ エッチングパーツ その2
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記15 悲劇のデカール
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記16 悲劇のデカール その後
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記17 デカールなんかに負けないぞ
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記18 ガンビアベイのメインマスト
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記19 ドロップタンク作製記
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記20 FMワイルドキャット
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記21 TBF アヴェンジャー 雷撃機
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記22 張り線の作成
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記23 星条旗よ永遠なれ
- 護衛空母ガンビア・ベイ作成記 完結 護衛空母 ガンビアベイ 完成
護衛空母ガンビア・ベイ作成記1 護衛空母ガンビア・ベイ作成始めました
護衛空母ガンビア・ベイ作成記 1/350 ハセガワのキットだけど、良く出来ている。作るのが楽しくなります。また作成風景などをブログしますね!模型サイズ:全長 447mm、全幅 94mm。アメリカ海軍 第77任務部隊第4群第3集団所属 レイテ沖海戦時
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護衛空母ガンビア・ベイ作成記 今、ガンビアベイの迷彩塗装を頑張って行っています。 迷彩塗装がカッコイイから買ったんだけど、いざマスキングをしてみると・・・心が折れそう・・・・平面にマスキングするにはこの用紙で大丈夫だけど、実際の船体に張ると、長さが足りない??
護衛空母ガンビア・ベイ作成記3 ガンビアベイの迷彩塗装・・・その後
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